素地調整(下地処理)の作業は、その作業内容や方法に応じて大きく1種ケレンから4種ケレンまでの4種類に分類されます。
さびの面積や塗膜の割れ、膨れなど旧塗膜の状態からどの程度の素地調整を行うかを判断します。
下表のとおり、 1種ケレン や2種ケレンではさびや旧塗膜の除去面積が広く、その作業負荷やケレン残しによる再発錆といった課題が存在します。
1種ケレン:ブラスト法を用いてさびや旧塗膜を徹底除去
4種類の中で最もケレンの効果が優れているのがこの1種ケレン。さびや旧塗膜を完全に除去して鋼材面を露出させます。
細かい砂や金属片などを使った研磨剤を高い圧力で打ち付けて表面をみがく「ブラスト法」を用います。とにかく大掛かりな作業になるため、道路橋など大きな構造物に対してのみ行われます。
徹底してさびや汚れが落ちるので防食効果は抜群ですが、粉塵が飛び散る、騒音が大きいなど周辺への影響が大きいのが難点です。作業を行うときは足場に専用の養生をしっかりと施し、作業者の防護も必要となります。
2種ケレン:ディスクサンダーなどの動力工具を用いる素地調整
さびが発生している面積が30%以上とさびの状況が深刻な場合、この2種ケレンを用いてさびや旧塗膜を除去して鋼材面を露出させます。
2種ケレンはブラスト法ではなく、ディスクサンダーなどの動力工具や手工具を使ってさびや汚れを除去します。
職人の手作業で全てを行う2種ケレンは、橋梁など大規模な構造物の場合においては、鋼材面の面積も広く作業に時間がかかり費用も高くなるので実用的ではないとされています。
3種ケレン:活膜を残し、死膜は除去する
1種、2種はさびや汚れだけではなく旧塗膜をすべて取り除くことが前提ですが、3種は旧塗膜のうちしっかり密着しているものを「活膜」として残し、さびが発生している面やひび割れたり膨れたりしている旧塗膜を除去します。
さびが発生している面やひび割れたり膨れたりしている旧塗膜の面がどれくらいの割合であるかのさび面積・塗膜異常面積で3種A、B、Cの3段階に分けて考えます。作業自体は2種と同様に動力工具や手工具を使ってさびや汚れを除去します。
ちなみにひび割れたり膨れたりしている状態の旧塗膜は、「死膜」などと呼ばれます。
【3種Aケレン】さびが発生している面積 15~30%,塗膜異常面積 30%異常
【3種Bケレン】さびが発生している面積 5~15%,塗膜異常面積 15~30%異常
【3種Cケレン】さびが発生している面積 5%,塗膜異常面積 5~15%異常
3種ケレンはケレン面積に応じてA,B,Cの3つのランクに分かれますが、ケレン作業自体は同一となります。
4種ケレン:軽く目荒しする清掃ケレン
ケレンの種類の”定義”は、施主によって異なる
塗料の塗替えをする際には、施主側がケレンの種類を指定して発注するというのが一般的です。施主によってはケレンの定義も異なる場合があることに注意が必要です。
本来はまず足場を架設して全体の状況をつぶさに点検し、どのケレンを行うのか決めるべきですが、なかなかそこまで出来ないのが実情です。全体としてどれくらいのさび面積があるか、塗膜の不良部があるかを、目視調査等にておおよそ確認します。
いかがでしたでしょうか?
ケレン作業にも、これほどの種類がある事を理解して頂けると幸いです。